スミレ 丈夫な性質があり、品種名を確定するのが難しい。アリとの共生関係を持つ。

丈夫な性質がある「スミレ」

スミレ(菫)は日当たりのよい草地や田畑のわき、堤防などでよく見かける多年草です。スミレには丈夫な性質があり、都会ではコンクリートのひび割れに生えることもあります。

スミレの原産地は北半球の温帯地域で、日本では北海道から沖縄まで全国で見ることができます。園芸種として多く知られている「パンジー」や「ビオラ」もスミレの仲間です。

パンジー 物思いにふけっているように見える花。ビオラと非常によく似ている。

スミレの名前の由来は複数ありますが、花の形が直線を引く際に使う大工道具の「墨壺」に似ていることから、墨入れが転じて「スミレ」となったという説がよく知られています。

スミレは基本的に観賞用として花姿を楽しむことが多いですが、食用としても親しまれています。スミレの葉は天ぷらやお浸しなどにも用いられ、スミレの花の砂糖漬けは、お菓子としても有名です。

アリとの共生関係「スミレ」

スミレのは開花時期は3~5月で、3月の暖かくなる時期から花が咲き始め、5月初旬に見頃を迎えます。紫色を「スミレ色」とも呼ぶように、スミレといえば紫のイメージが強い植物ですが、他にも白、ピンク、黄などの花色もあります。

スミレは花径が2cmほどで、茎に1輪の小さな花をつけます。スミレの花びらは5枚ですが、下側の1枚(唇弁)が大きく左右対称になっています。

スミレは開花後に種子をつけますが、種子が入っている「サヤ」に仕掛けがあります。サヤが開いて種子がむき出しになった後先端からサヤが縦に閉じて、時には3mを超すほど遠くまで種子を弾き飛ばします。

またスミレの種子には「エライオソーム」という甘い物質がついているため、アリも種子を運びます。このエライオソームはスミレだけでなく、「カタクリ」や「ケマンソウ」など春先に咲くほかの花も持っており、アリとの共生関係を繁殖の手段の一つとしています。

品種名を確定するのが難しい「スミレ」

スミレは開花時、茎を伸ばさずに葉の上に直接花を咲かせる「無茎種」と、伸ばした茎の先に花を咲かせる「有茎種」との二種類に分かれます。さらに葉の形も二つあり、笹のように細長い葉と丸い葉があります。

無茎種には白い花びらと細長い葉を持つ「アリアケスミレ」や、淡い紫色の花びらと細長い葉を持つ「ノジスミレ」があります。また有茎種には淡いピンクの花びらと丸い葉を持つ「アケボノスミレ」や、明るい黄色の花びらと大きな丸い葉を持つ「オオバキスミレ」などがあります。

一般に「スミレ」というと、日本に昔から自生し濃い紫色の花を咲かせる細長い葉の「スミレ」か、「タチツボスミレ」を指します。タチツボスミレは日本で最もよく見られる品種の一つで、淡い紫色の花びらと丸い葉が特徴です。

スミレは世界中に450以上もの品種があるとされ、日本に自生する野生のものは約80種、変種などを含めると200を超える品種があるといわれています。スミレは自然交配による交雑種も多く、品種名を確定するのが難しい花です。

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