ボタン 美しさを象徴する植物で、花びらは薄く絹のようにも見える。シャクヤクと見た目がよく似ている。

美しさを象徴する植物「ボタン」

ボタン(牡丹)は中国や日本で古くから愛されている落葉低木で、園芸種は1~1.5mの高さになります。ボタンは牡丹餅(ぼたもち)、牡丹鍋(猪鍋)、ボタンエビなどの食べ物の名前や、ぼたん雪、牡丹桜などの名称でもなじみ深い花です。

ボタンは奈良時代に中国から薬用植物として渡来したといわれていますが、江戸時代に植物好きの徳川家康によってモンゴルから園芸種が持ち込まれ数多くの品種が生み出されました。なお現在栽培される品種の多くは、明治以降に作出されたものです。

ボタンの別名は「ナトリグサ(名取草)」、「ハツカグサ(二十日草、廿日草)」、「フウキソウ(富貴草)」、「百花の王」、「天香国色」、「深見草」、「鎧草」等多く、俳句や短歌で季語として使われています。

ボタンは美しさを象徴する植物であり、古くから様々な工芸品や絵画の意匠としても用いられています。また女性の美しい立ち居振る舞いが「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と形容されてきましたが、シャクヤク、ボタン、ユリはすべて婦人病によく使われている薬草です。

ヤマユリ 開花した花からは、甘く強い香り。カサブランカの親で、ユリの女王。

花びらは薄く絹のようにも見える「ボタン」

ボタンの開花時期は4~6月で、4月下旬〜5月頃に見頃の時期を迎えます。また、春と秋に花を咲かせる二季きの「寒牡丹」という種類もあります。

ボタンは芽吹きの季節を迎えると落葉した枝の先に新芽を出し、15~40㎝程の大きな花を咲かせます。ボタンの花びらは薄く絹のようにも見えますが、実際に手で触ると分厚くしっかりしています。

ボタンの花は古くは赤い花が主流でしたが、今は品種改良が進み白、赤紫、紫、薄紅、黄、ピンク、オレンジなど様々な色があります。また花の形は一重咲、八重咲、千重咲、万重咲きなどの種類があり、それぞれに違う美しさを持ち華やかな花を咲かせるのが特徴です。

ボタンの野生種は、5種ほどが中国に自生しています。ボタンは主に日本や中国で改良されましたが、黄花の野生種「ルテア」はフランスで、暗紅紫色の花をもつ「デラバイ」はアメリカで交配親として用いられ、独自の品種群がつくられました。

シャクヤクと見た目がよく似ている「ボタン」

ボタンと見た目がよく似ているシャクヤクはボタン科の植物で、豪華で大きな花をつけるという共通点があります。ボタンとシャクヤクは見た目がよく似ているので混同されがちですが、見分け方があります。

ボタンの葉にはツヤがなく、フチには切れ込みが入っています。シャクヤクの葉は厚みがあって表面はツヤがあり、切れ込みがなく丸くなっています。葉はシャクヤクの方が小さいです。

ボタンは香りが弱いため開花中に香りを感じることはあまりありませんが、わずかに柑橘系のよい香りがします。シャクヤクはバラのような甘い香りがします。ボタンとシャクヤクは開花が一部重なるため、開花時期だけでボタンかシャクヤクかを判断するのは難しいです。

ボタンは「サザンカ」のように花びらが1枚ずつ散っていきますが、シャクヤクは「ツバキ」のように花が開花した状態でそのまま下に落ちます。ボタンは花が散るのが早いのも特徴です。

サザンカ 和風の庭木として人気のある、冬の花。3つの園芸品種群がある。

ツバキ 文化的にも重要な樹木で、花には香りがない。数多くの園芸品種が生み出されている。

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